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法律 辻説法の動画より

【マンション管理士】過去問解説 令和2年 問15

契約不適合責任
 ①追完請求⇒②代金減額請求
 ③解除(契約不適合が軽微な場合を除く)
 ④損害賠償

民法566条
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、
買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、
その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の
解除をすることができない。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、
この限りでない。

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過去問解説 令和2年 問15

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2020年4月1日に改正民法が施行されました。
その中で、これまでの「瑕疵担保責任」に変わって登場したのが、「契約不適合責任」です。

契約不適合責任では買主は5つの権利をもつ
契約不適合責任が発生した場合、購入した側は下記5種類の請求をする権利を認められています。

●5つの請求方法
・追完請求
・代金減額請求
・催告解除
・無催告解除
・損害賠償

追完請求
追完請求とは、改めて完全な給付を請求するということです。

種類や品質または数量が契約内容と異なっていれば、追完請求により完全なものを求めることができます。
ただし、不動産は基本的に世界で同じものがない特定物ですので、数量を追加するという概念はありません。

基本的に不動産売買における追完請求とは、具体的には修補請求が該当します。
修補請求は「直してください」という請求です。

契約不適合責任が発生するかしないかは、契約書に「書かれていたか、書かれていなかったか」という点が大きなポイントになります。
契約書の内容が大切になりますので、「雨漏りしていません」と契約書に書いてあったのに、雨漏りしていれば「雨漏りを直してください」というのが追完請求になります。
当然のことながら、契約書に「雨漏りしています」と書かれていれば買主側から追完請求をすることができません。

ただ、たとえ契約書に書かれていなくても、住むための用として契約する不動産の契約書で、雨漏りについて書かれていない物件で雨漏りがあった場合、そもそも住むことを前提として契約がなされている=契約内容とは異なる(住むための用を満たさない)ものを売った=契約不適合責任を負うことになります。

一部、築70年や100年などかなりの築年数がたっていたり、手入れが長いこと行われていない空き家物件などの場合、経年による劣化が容易に想像できることから、雨漏りなどの記載がされていなくても責任を負わずに済むケースもあります。

売主が追完請求を受けないようにするためには、売却する物件の内容をしっかりと確認し、細部まで明記することが重要なのです。

代金減額請求
上記の追完請求を売主側が実行しない場合、買主は契約不適合責任では次の一手として、代金減額請求をすることができます。
名前のとおり、売買価格を減額する請求です。

基本的に、追完請求したのに売主が実行しなかった場合に行うことですが、例えば履行の追完が不能(土地面積が足りないなど)であったり、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表した場合などは、最初から代金減額請求ができます。
ちなみにこの代金減額請求も、瑕疵担保責任では請求できませんでした。

代金減額請求権は、追完請求の補修や修正請求をしても売主がその行為を行わない、行えないとき、もしくは、補修自体ができないときに、買主側に認められる権利です。

代金減額請求は、まず「買主側が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないとき」に認められるものです。

もちろん直せるものであれば、まずは追完請求を行って、それでも直してもらえないときに「であれば、代金を減額してください」と請求します。

また、明らかに直せないものなど、追完の補修が不可能である場合は、催告なしで買主は直ちに代金減額請求することもできます。

つまり、代金減額請求権は、直せるものは直してもらい、「直さない」「直せない」場合に使える請求になります。

催告解除
催告解除とは、追完請求をしたにもかかわらず、売主がそれに応じない場合に買主が催告(相手側に対し一定行為を請求すること)して契約解除をすることです。

売主が追完請求に応じない場合、多くのケースで買主は代金減額請求では納得できないことがあります。
不動産の場合、売買代金が減額されても、住めない、住むために多額の費用がかかる、こうした致命的な欠陥があるケースが多いからです。
そのような場合、「購入を止める」と売主側に伝えるのが催告解除です。
契約解除と同じ意味と考えていいでしょう。
通常、契約後に契約を取りやめると違約金が発生しますが、この催告解除で契約解除されれば契約はそもそもなかったものとなるため、売主側から買主側に無条件で売買代金の返還が必要になります。

ただ、民法の条文には「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間(定めた期間)を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない」(541条)とも記載されているので、権利を行使する際は不動産会社や弁護士に相談してみましょう。

無催告解除
催告解除とは、追完請求をしたにもかかわらず、売主がそれに応じない場合に買主が催告(相手側に対し一定行為を請求すること)して契約解除をすることと紹介しました。

一方、無催告解除は、契約の目的が達成できない、つまり相手方の履行が期待できない、履行が不可能であると考えられる場合にできる契約解除を指します。
旧民法の瑕疵担保責任でも契約の目的が達成できないときに契約解除ができました。
瑕疵担保責任でもあった契約解除を引き継いだのが無催告解除になります。
これは催告をすることなく、直ちに契約を解除することができるものとなります。

どんな場合に適用できるのかというと、改正民法542条で次の5つのケースが定められています。
(1) 債務の全部の履行が不能であるとき、
(2) 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
(3) 債務の一部の履行が不能である場合または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき
(4) 定期行為の時期を経過したとき
(5) 催告をしても契約の目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかなとき

損害賠償
損害賠償請求は、旧民法の瑕疵担保責任でも認められていたものの、契約不適合責任とは少し内容が異なるので注意が必要です。

何が違うのかというと、瑕疵担保責任の損害賠償請求は売主の<無過失責任>でしたが、契約不適合責任では売主の<過失責任>になります。

無過失責任とは、損害の発生について故意・過失がなくても損害賠償の責任があるということを指します。
いっぽう過失責任とは、故意や過失がなければ損害賠償の責任を負わなくて良いという考え方です。
つまり、契約不適合責任では、売主が故意に隠した不具合や、売主の過失で生じた損害でない限り、買主は損害賠償請求をすることができません。

ただし、瑕疵担保責任の損害賠償請求ができる範囲は<信頼利益>に限られていましたが、契約不適合責任の損害賠償請求の範囲は<履行利益>も含まれます。

信頼利益とは、契約が不成立・無効になった場合に、それを有効であると信じたことによって被った損害を指します。
不動産売却の場合では、例えば登記費用などの契約締結のための準備費用が該当します。

また、履行利益とは、契約が履行されたならば債権者が得られたであろう利益を失った損害を指します。
例えば転売利益や営業利益などが該当します。

改正前の旧民法であった「瑕疵担保責任に基づく損害賠償」と「債務不履行に基づく損害賠償」の2本立てであったものが、今回の改定で1つに集約されたというイメージです。


こちら↓から一部引用しました。